Pearl Izumi (PI) が創業時から育んできたブランドのDNA「良き作り手であり、良き使い手でありたい」。1950年当時、自転車競技選手だった息子のために最高のウェアを作りたいとの想いで、創業者はサイクルウェアを再定義し始めた。ウェアへのフィードバックを息子やユーザーから聞いては改善していくという地味なプロセスを積み重ねてきた。60年を経た今、幅広いサイクリストに着てもらえるウェアを世に送り出すに至った。
質の高いウェアづくりにおける1つの挑戦は、「相反するもののバランスを保つ」ことにある。例えば、「より長く使えて耐久性のあるウェアで、かつよりソフトで自然な着心地を感じさせるものを作る」となればそれに合う素材を選び、長い時間をかけて検討し、テストを行う。開発者は気の長くなるようなプロセスを経て1つの素材を選んでいる。
流行のカッティング、発色の良い素材、薄い素材などの選択に安易に飛びつく前に、「これらの新しい仕様のウェアでストレスを感じる人はいないか」と多角的に開発者は考える。「より多くの人たちが長く愛用できるウェア」がPIのポリシーの1つであった。
1990年代に入り、サイクルスポーツが今まで以上に一般的なスポーツとして選択されるようになってきた。ライドの楽しみ方はロード、MTB、シクロクロスなど多様化した。サイクルウェアを世に送り出すメーカーにはプリント技術が広く普及し始めた。今までの既成概念を超えたデザイン感のサイクルウェアが世の中に普及した。
この変化の中で「ウェアは自転車に乗るためのもの」を超えて、「その人のアイデンティティを表現する手段や存在」と捉えるユーザーが増えてきた。 彼らはシリアスにライドするために高い耐久性と着心地の良さを兼ね備えたウェアを求めている。加えて、自分達のエモーションを刺激するウェアを選択するのではと考えた。
2018年、「ウェアづくりを再定義して、彼らの感性を刺激したい」との想いで、PIはPIGL(Pearl Izumi Garment Lab)を立ち上げた。
PIGLのウェアクラフトでは、5つの視点の最適なバランスを取ることをゴールとしている。それらは、ファブリック、テクノロジー、シルエット、ディテール、カラー。
ファブリックやテクノロジーでは、快適かつ肌触りの良い素材選び、さらに素材そのものを生み出すことから開発者は考える。シルエットは、身体により自然にフィットする形をパタンナーが作り上げる。ウェアの細部へのこだわりを持ち、テーマ性を強く意識してカラーやデザインを企画者は練り上げていく。専門的なスペシャリストが5つの視点で1つのウェアをクラフトする。