パリ大会後の表敬訪問

2024年9月、パリ郊外の街「クリシー・ス・ボワ」で行われた自転車女子個人ロードレース(C1-3)で、杉浦選佳選手が東京2020パラリンピックに続き2連覇を達成。現地では体調不良に苦しみながら自転車競技4種目に臨んだパリ大会だったとのこと。トレーニングのパートナーでもある八幡光哉マネージャーと大会に向けたトレーニングを積み重ね現地へ赴いたが、パリへの出国直前のタイミングで持病の喘息症状が出てしまった。

「大事な時期に準備もできず、夜は十分に寝られずコンディションを落としてしまいました。インフルエンザやコロナの検査を受けたのですが…..落ち込み、追い詰められていました」と、お話頂いた。

パリ大会後の表敬訪問の際には、パールイズミ社員が本社玄関で杉浦選手をお出迎えしたのだが、杉浦選手から社員に、今回のパリ大会の金メダルがどのように製造されたかを説明していただいた。

オリンピックの最大のシンボルのひとつであるメダルと、フランスのシンボルであるエッフェル塔を組み合わせるというアイディアで製作が進められたとのこと。 このために、フランスの宝飾工芸における重要性とエレガントさで世界的に知られるジュエリー専門のChaumet(ショーメ)がメダルを製作、エッフェル塔の鉄をメダルに組み込むことでメダルが完成した。持ってみたところ、「とても重い、重みがある」が印象だった。

 

 

開発担当からのウェア開発の振り返り

その後、再度バイシクルクラブの取材と撮影のため、本社にお越し頂く。現地でのご苦労は取材記事に詳細は譲るとして、改めて、パールイズミの開発担当佐藤より、杉浦選手と権丈監督へ大会に向けたウェア開発や振り返りをお話しした。パリ大会で杉浦選手が着用した日本ナショナルチームのウェアは、パールイズミが約40年近く続ける研究開発のコアとなる取り組みで、最新素材とテクノロジーを使った最新モデルだ。また、杉浦選手などが着用するエアスピードジャージは一般サイクリストでも、オーダーウェアのサービスでオリジナルのデザインを乗せてプリントすることもできる。

 

 

「今回のジャージやビブパンツ、ロードスーツは、軽量化とエアロ性能を両立させたモデルです。以前の生地よりも30%ほど薄く、肩口などには『スピードセンサー®︎Ⅱ』という空気抵抗素材を採用しています。開発の初期段階では、素材候補を集め、それらを風洞実験で検証することから始めました。候補の素材の中から格子(菱形)の凹凸素材が空力的に優位であることを分かりました。その後はその素材をどの部位(肩全体なのか?部分的なのか?太ももの全体なのか?部分的なのか?)に配置することが最も空気抵抗に優れているのか?脚が動くマネキンを作り、JAXAでの風洞実験で検証しました当時の開発の様子はこちら)

「また、サイクルウェアではフィット感も大切です。軽量、空気抵抗に優れている、だけでは十分ではありません。そのためには、当たり前の話ですが、選手の体にぴったりフィットさせることが大事です。最適なフィット感を生み出すため、パリ本番の1カ月前にも杉浦選手の身体のフィッティングを行いました。採寸に基づきパリ大会向けオリジナルジャージを用意しました」

「すべての選手に良いタイミングで採寸することは、選手のスケジュールや弊社のリソースの制限もありなかなか難しいですが、ここ一番の大会などでは昔からこの採寸作業を通して、その選手だけにフィットするウェアづくりを続けています。現地のレースで可能な限りストレスフリーのウェアを着用頂き、高いパフォーマンスを出してほしいと願ってご対応しています」(開発担当佐藤)

 

 

終わりのないウェア開発

競技向けのウェアは着用される選手のパフォーマンスを最大限に引き出すことが究極の目的だが、選手1人1人好みや要望が異なるため、「できる」、「できない」を整理しつつ、生産コストや予算なども加味しながら、進めていくこともウェア開発では難しい部分だ。また、他のスポーツ用ウェア(ゆったりとした)と違い、サイクルウェアは体にフィットするウェアのため、多くの選手にフィットするウェアづくりも求められるが、それぞれ体形や骨格も違うため開発の難易度が上がっていく。まるで高い頂上を目指してひたすら登山するようなものだ。

終わりのないウェア開発に、パールイズミは一丸となってこれからも丁寧に忍耐強く取り組んでいく。

(杉浦選手、ご来社ありがとうございました。これからもパールイズミみんなで応援していきます!)