幼少期に出合った自転車の魅力、競技としての“奥深さ”

――ロードレースやトラック、シクロクロスとさまざまな種目で活躍されているお二人ですが、自転車を始めたきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

村上選手

僕は小学校1年生のころ、2つ上の兄(村上功太郎/松山大学)の影響でMTBに乗り始めました。はじめは趣味程度に走ることを楽しんでいましたが、MTBは一瞬の気のゆるみが顕著に走りに現れてしまうので、うまく走るための集中力を鍛えようとレースにも参戦するようになりました。

今ではロードをメインに冬はシクロクロスにも参戦していますが、それぞれの競技にいろんな魅力を感じています。ロードは練習こそキツいですが、そのぶん勝ったときの喜びは大きく、心の底から「嬉しい!」と叫びたくなるような、MTBやシクロクロスでは味わえない高揚感があります。

渡部選手

私は小さいときからいろんなスポーツをやっていたのですが、小学6年生のころに出場したトレイルランニングの大会で知り合いから「トライアスロンをやってみないか?」と誘われたのがきっかけでした。今はロードとトラックをメインに、冬にはシクロクロスの大会にも参戦しています。なかでもロードはコースレイアウトのバリエーションも多いですし、集団か単独か、晴れか雨かといったさまざまなシチュエーションを楽しめるので、魅力的な競技だなと感じています。

人間性を育てることで、結果として競技力を伸ばしている

――明治大学に在学中からプロ選手時代まで、数々の戦績を残している西沢コーチですが、コーチを目指すことになった経緯と、選手育成で大切にしていることを教えてください。

西沢コーチ

もともとは高校教師を目指していたのですが、選手として活動するなかで指導者や明治大学のOBなどさまざまなご縁があり、明治大学へ就職しました。その後、自分がこれまでしてもらったことを恩返ししたいなという気持ちもあったのでコーチを引き受けることにしました。

プロ選手と違い大学生は競技力だけではなく、勉強はもちろんのことこれから社会に出る人間としての礼儀や協調性なども身につけなければなりません。そのため、対話の中ではつねに“人間性を育てる”という点を意識しています。どうしてそう考えたのか、何を思って行動したのか。選手からこういった意見を引き出すのも指導者の重要な役割だと思っています。

――指導者と学生の理想的な関係が築けているということですね。ちなみに部内はどのような雰囲気なのでしょうか?

渡部選手

明治大学は本当にみんな仲が良くて、学生間はもちろんですが監督やコーチとの距離も近いので、ツラい練習や合宿も楽しみながら乗り越えることができます。他大学に比べ明治大学は東京のど真ん中にあるので練習場所へのアプローチという点では不利かもしれませんが、そういった環境に負けない人間同士のつながりが強いチームだと感じています。競技に対する疑問や悩みも話しやすい雰囲気ですね。

 

――マネージャーや明大スポーツ新聞部(明スポ)なども印象的な明治大学ですが、自分たちの競技を支える人たちの存在はどのように感じていますか?

渡部選手

明スポの方は昨年の鳥取での大会など遠方にも足を運んでくれて、自転車競技の魅力を私たちの代わりに発信してくれるので本当にありがたい存在です。個人としても何度かインタビューをしてもらいましたが、記事が出る前に比べ応援してくれる人も増えたように感じます。

あと、マネージャーさんの存在も大きいですね。いい時も悪い時も、すべての時間を使っていつも笑顔で支えてくれているので、本当に感謝しています。

 

村上選手

僕の場合、マネージャーや明スポの方々はもちろんですが、地元愛媛からの応援がモチベーションになっています。以前個人戦で3位になったことがあるのですが、優勝を逃したにも関わらず愛媛新聞でその時の成績を取り上げてもらったり、家族や友人からも「頑張ってるんだね」と連絡をもらうことも多いですね。もっといい成績を残して一面を飾って、地元で応援してくれている人たちにも恩返しができればいいなと思っています。

 

――お二人は高校でも自転車競技部に所属されていましたが、明治大学の体育会自転車部に入部して、特に成長したと感じることはありますか?

村上選手

高校生のころは長丁場のレースでは必ず脚が攣ってしまい、完走するのがやっとということが多かったのですが、明治大学に入ってから長距離に耐えれる身体になってきました。身体が変わった一番の要因は週に1度、吉井コーチ指導のもと行っている150~200kmの長距離練習ですね。高校のときのフィジカルとは段違いで、今では150kmを超えるレースでも脚が全く攣らなくなりました。

ただ、大学は高校と違って履修登録をうまくやりくりして練習時間をどれだけ捻出できるかもカギになってくるので、なるべく長距離の練習時間がとれるよう、時間割を工夫しています。早い時は朝4時半から朝練があるので、夜更かしをしないようにしたり、空き時間に休息をとることもあります。

 

渡部選手

私も吉井コーチの長距離練習のおかげで、長丁場のレースでも安定したパフォーマンスを発揮できるようになりました。女子部員は私ひとりなのですが、練習を男女で分けて考えるのではなく、ひとりの競技者として扱ってもらえるのも明治大学の良さだと感じています。また、ロードやトラックの走り方も吉井コーチに教わりましたが、練習で得た自脚の強さはMTBやシクロクロスといったほかの種目でも活かせていると思います。

――学業との両立も大変そうですが、普段はどのような練習を行っているのでしょうか?

西沢コーチ

これまでいろいろと試行錯誤してきましたが、現在の練習メニューは、距離ごとに分けられた各班のリーダーを中心に決めてもらっています。我々コーチや監督は、合宿や試合でのフィードバックがメインになりますね。ただ、ターゲットとしている大会に向けてどう調整するか?などは各班のリーダーとしっかり話し合ってトレーニングの方向性を決めています。

 

村上選手

種目に関係なく同じ練習メニューが与えられる大学もあるみたいですが、僕はやっぱり種目(距離)ごとに練習メニューが分かれているほうが効率よくトレーニングできると思っています。そのなかで自分に足りないものを見つけて、さらに個人練習ができるかどうか。自由時間を削っての練習も確かにキツいですが、それをやるかやらないかで確実に差が生まれてくると思います。

 

着心地はもちろん、選手との距離の近さもパールイズミの魅力

――パールイズミのウエアを実際に着用してみて、着心地はいかがでしたか?

村上選手

とにかくフィット感がすごくいいですよね。肩回りに仕様されているスピードセンサー® IIもそうですが、サイズ感を含めオーダーならではの着心地の良さがありますし、何より担当者がこちらの求めるウエアをきちんと提案してくれる、というのが印象的でした。じつは以前、シクロクロスで落車して全日本前にウエアが破けてしまったことがあるのですが、そのときもすぐに新しいものを用意してくれて、本当に助かりました。

渡部選手

競技ごとに求める性能はいろいろありますが、私もやっぱり柔らかくて動きやすいのが1番だと思っているので、パールイズミさんのごわごわしない絶妙なフィット感がとても気に入っています。

またウエアの性能だけでなく、パールイズミさんは担当者がとっても親身になって話を聞いてくれますよね。連絡もマメにいただきますし、全国各地のレース会場に駆けつけて直接応援してくれるメーカーはそう多くないと思います。

西沢コーチ

学生時代からプロまで、さまざまなウエアを着用してきましたが、今のパールイズミは革新的なイメージが強いように思います。コーチの私から見ても、今の学生たちが着用しているオーダーウエアはデザインや性能が以前にも増して進化しているなと感じています。

 

昨年の悔しさをバネに、今年こそ悲願のインカレ総合優勝を目指す

――シーズンも折り返しとなりましたが、今年は明治大学にとってどのようなシーズンにしたいですか?

西沢コーチ

昨シーズンはひと言で表現するなら“悔しいシーズン”でしょうか。個人戦トラックの結果も良く、インカレを前にいい流れが作れていたのですが、新型コロナウイルスの影響で、チームが目標としていたインカレに出場することができませんでした。多くの大学が優勝を目指すなか、明治大学だけがスタートラインに立てない……。選手はもちろん、期待してくれていたOBや関係者にとっても非常に心残りの多いシーズンだったように感じます。なので今年はそんな悔しさをバネに、インカレをはじめ残りのレースを悔いのないようしっかりと走り切ってもらいたいと思っています。

 

――9月には鹿児島でのインカレも控えていますが、今後の目標を教えていただけますか?

村上選手

やっぱり直近の目標はインカレロードでの優勝ですね。仮に優勝が厳しかったとしても、そのときの最善の走りで、全力を出し切って走りたいなと思っています。個人優勝はもちろん、やるからには総合優勝も狙いたいですね。あと、シクロクロスでは今年こそU23で優勝して全日本チャンピオンになりたいです。昨年は兄に負けて2位と悔しい想いをしたので、今年こそは優勝します!

 

渡部選手

じつは今、少し調子を落としているんですけど、「長い人生、こういう時期もあるよね」と前向きにとらえるようにしています。なので今はひとつ一つ目の前にある練習をしっかりとこなしていく、ということが目標ですね。もちろん、そういった練習を積み重ねた先にインカレでの優勝があると思っています。

将来のことはまだわかりませんが、海外レースなんかを見ているとああいう舞台で走りたいな、と憧れる気持ちもあります。もちろん、挑戦するチャンスがあればですが、いつも応援してくれている人たちのためにも、いつかすごい大舞台で勝って、恩返しができればいいなと思っています。

西沢コーチ

二人とも自転車に乗せたらピカイチだと思うので、正直競技力という点ではあまり心配はしていません。ただ、ツラいときや厳しい状況になったとき、逃げずにどうやって課題と向き合い乗り越えていくか。自立心を養いつつも、自分たちだけで解決できないときにはまわりの大人や親御さんにも頼ってほしい。そういう人たちとしっかりと繋ぎ合わせる、ということが今の私の役目かなと思っています。