ロードバイクとの出会い
ある日、友人から誘われた屋久島への旅。それは一般的な旅行ではなく、神秘的で美しい島をロードバイクで1周するというイベントだった。「これが初めてロードバイクに乗るきっかけでした。話を聞いた瞬間に、それ面白そう!って思いましたね。自分の身体一つで島1周100kmを移動するという概念は、それまでの自分にはなかったんです」
それまではいわゆるママチャリにさえ乗ったことがなかったという萌子さんは、これから自分が体験する冒険に胸を躍らせた。すぐに自転車屋さんへ行き、何の知識も持たないまま店頭で勧められるがままにバイクを購入。もちろん旅先への自転車の輸送方法さえ知らない状態だった。仲間のサポートのおかげでイベントのスタート地点に立った萌子さんは、そこから最高の時間を過ごすことになる。車のフロントガラス越しではない目の前に広がる景色や、車中にいれば感じることのない自然の香りや風。全てが新鮮で、そして感動的だった。
幼少からの習慣であるバレエやお琴の他に、ランニングやワークアウトを楽しみ、アクティブなライフスタイルを送ってきたが、彼女にとって自転車の魅力はこれまでに経験したことのない新しい感覚で溢れていた。
「どこまでも行ける!って思えちゃうんですよね。風を切って、自分の足で漕ぎ続けることではるか遠いまだ出会ったことのない景色を見に行ける。未知の可能性が広がっていて、すごく感動的なんです」目を輝かせてそう語ってくれる彼女には、実は過去に落車経験がある。サイクリストなら一度は通る登竜門なのかもしれないが、落車が心身に与えるタメージは計り知れない。すぐにバイクにまたがることはできなかったが、自転車への愛だけは光を失うことなく、ランニングやフィットネスバイクで筋力維持のためのトレーニングは欠かさなかった。
自転車と旅の魅力
1年ほどバイクから離れただろうか。セーフティーファーストをこれまで以上に心がけ、安全の乗るための最低限のスキルを学び、フラットペダルにスニーカーで乗るスタイルに変えた。愛車のキャノンデールに乗り始めたのも、この頃から。とことん見た目のかっこよさにこだわったオリジナルデザインの愛車と共に、落車の恐怖心を克服した彼女は、既成概念に捉われることなく自分らしく自転車を楽しむことの大切さに気づいて心が自由になる。
もっとたくさんの景色に出会いたい。知らない土地の空気を感じたい。その溢れ出る冒険心は、スポーツトラベラーとして自転車と共に国内外を旅する彼女のライフスタイルとなった。思い出深いトリップは、現地に知人もおらず、フライトだけ予約をして旅をしたオーストラリア。相棒のキャノンデールと共に、空港に着いた瞬間からまるで羽を纏ったかのような自由な時間が始まる。気の向くままにサイクリストフレンドリーに整備された道を走り、カフェに入ってコーヒーを飲む。サイクルジャージのまま店内に入ると、定員さんが「素敵だね!」と優しく声をかけてくれる。
その人らしい個性的なスタイルに対してストレートに賞賛してくれる価値観が心地よい。暖かい気候に背中を押され、どんどん心が開放的になり最高にリフレッシュできたそう。他にも、本場のロードレース観戦のためにイタリアへ行き、プロ選手と触れ合いながら自らも歴史ある街並みの中ライドを楽しむ。自分の好きなトップ選手がファンサービスで近くに来て話し掛けてくれる時の高揚感は、言葉では言い表せない感動があるだろう。自転車が大好きという気持ちが好奇心を掻き立て、持ち前の行動力により世界が広がっていく。こうした経験すべてが日常に刺激をもたらし、多くの人との出会いや数多くの感動体験を生み出している。
ゲストライダーとして様々なイベントやレースに登場し、サイクルメディアでも彼女の姿を眼にする機会が増えたのではないだろうか。たくさんの人に自転車に乗ることの魅力を伝えたい。「特に女性には、恐怖心を持たずに気軽にサドルにまたがってみてほしいですね。細いタイヤやビンディングペダルに抵抗があるなら、最初は街乗り用のクロスバイクでもいいと思うんです。慣れてきたら自分自身を自らの脚で遠くに連れて行ってくれるロードバイクに切り替えて、自転車と共にいろんな場所に行ける楽しさ、最高の乗り物の魅力を一緒に味わいたいです。」
「Life Long Learnerであること」一生学び続ける姿勢を忘れたくないという信念を持った彼女は、これからもフラットペダルで世界中を旅し、自転車が生涯においてかけがえのない存在であることを魅せ続けてくれるだろう。