パールイズミのセールスを担当する丸山さんは元競輪選手。そして、ジャージの型となるパターンをひくパタンナーである巽さんはトライアスリート。競技者としての経歴や今の活動は一体どのようなものなのだろうか。

丸山さん:「僕はもともと競輪選手でした。競輪を目指したのは、単純に自転車が好きだったからです。同級生がサイクリングをしていて、楽しそうだと思い始めたのがきっかけで。最初は運動靴と自転車というスタイルで六甲山に行き、登り疲れたら自転車を手押しして歩きながら頂上を目指しました。そこから見た景色は今でも鮮明に覚えています。それから、高校三年生の時に自宅のそばのクラブチームのコーチから指導を受けるようになり、プロを目指しました」

the good life

念願叶ってプロになり、そこからの選手生活はなんと28年間にも及んだ。UCIマスターズ世界選手権のスプリントで3度の優勝、JBCFの大会でも優勝するなど、輝かしい結果を残している。引退を決めた2013年、理由は度重なる怪我だった。やり切ったので後悔はないと笑顔で語る丸山さんに、プロ生活への未練は見えない。だが、今でも自転車は好きで、マスターズレースと実業団レースに年1回ずつ出場している。エリート選手と戦える場は、彼にとって非日常を味わえる最高の場。結果を求めず、駆け引きや場の空気感を楽しむことが彼の自転車人生に今でも輝かせているのだ。仕事が最優先のため、練習は週1度の高強度練習のみ。それでも実業団レースで戦えるのは、長年プロとして活躍してきた経験値に他ならない。年々衰えを感じるものの、自分のペースで可能な限りチャレンジしていきたいという。

巽さん:「私は全くスポーツと関係のない世界で生きてきました。デザイナーを目指し勉強し、アパレル会社でパタンナーとしていた私がマラソンと出会い、そしてトライアスロンを始めて人生が大きく変わりましたね。今となってはプライベートはトライアスロン一色です」

巽さんは2017年の佐渡国際トライアスロンで年代別1位になったことを皮切りに、2018年の宮古島大会でも年代別1位、同年の佐渡国際トライアスロンでは総合5位入賞という躍進を遂げている。そして、ロングディスタンスのカテゴリーでコツコツと努力し続けているその姿勢が認められ、トライアスロン誌が主催するロングディスタンス世界選手権への切符を獲得するためのプロジェクト「コナチャレンジ」のメンバーにも抜擢された。

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フルタイムで仕事をしながら、時間をコントロールして3種目のトレーニングを計画通りに実行するのは決して簡単なことではない。しかし、彼女はいつも笑顔で楽しんでいるように見える。それは仕事でも自身のトライアスリートとしての経験が活きているからではないだろうか。

自転車競技とトライアスロン。共にサイクルジャージは欠かせないアイテム。
競技者としての経験をどのように仕事に反映させているのか、そしてやりがいとは何なのだろうか。

丸山さん:「僕は圧倒的に自転車の上で過ごす時間が長かったので、そこから様々な景色を見てきました。営業という立場で一番に伝えたいのは、まず怪我をしないように安全第一で乗ってほしいということ。極論ですが、疲労は別としてスタートした時と同じ身体の状態でゴールに戻ってこないと、レースそのものは全く楽しめないと思っています。ウエアの機能性や着こなし方も自分の経験値を交えてお伝えしながらも、ビギナーの方には交通安全の重要性や楽な乗り方、ポジションのアドバイスをすることもありますね。怪我や故障をされている方に対しても、復帰までの練習方法など自分で得た学びをお伝えさせていただいています。

結果を求めて自転車に向き合っていらっしゃる方は勝つことも大切なのはよく理解していますが、その過程も大切。身体のベースを常に良い状態に保ちながら、快適なウエアと共に楽しい自転車ライフを送ってほしい。それが僕の願いです」

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そんな丸山さんに、お客様から一通の手紙が届いたことがあるという。きっとその方はプロとして活動していた彼の姿を知っていた方なのではないかと推測する。手紙にはこう記されていた。「輝かしい経歴をひけらかすことなく、ただただ謙虚に、そして熱心に仕事をされている姿に感動しました」と。5年前の引退を決めた時、プロサイクリストとしての自分は全て捨て、仕事中心の人生を送ると決めた。その覚悟を垣間見た方の心を動かした素敵なエピソードだ。

巽さん:「パタンナーはデザインや素材、着心地を考慮しながら製図を引くのですが、前傾の乗車姿勢やペダリングによる動きをなるべく妨げないように快適なものに仕上げるのが私の役割です。1シーズンに大体20型くらいのパターンを引いている中で、前のパターンからデザインや素材など、必ず変更点が生じます。その時にウエアの魅力の一つであるフィット感を崩さないために、パターンを引いた後自分で縫い合わせ、実際に着用して自転車に乗って試すことが多いですね。特に寸法や、タイツの場合は膝周りの動きが重要になってくるので1時間ほど乗って確認しますが、自分がトライアスリートだからこそできる実験なので、お客様から自分がパターンを引いたウエアを褒めていただけると純粋にとても嬉しいです。また、ロードバイクに乗っている女性が少ないということもあり、日焼け対策や防寒対策といった女性のお客様からのお悩み相談は親身になって答えています」

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自身が競技者であり、さらにロングディスタンスを専門としているからこそ、快適なウエアを着ることの重要性を深く理解している巽さん。そんな彼女が通勤でテスト用のタイツを履いて実際に履き心地を試しては修正を繰り返し、納得いくパターンに仕上げているのだ。程よいフィット感とストレスのない着心地への信頼性が高いのが理解できる。

自分らしいペースで仕事と競技のバランスを保つお二人。丸山さんは、28年間プロサイクリストとしての人生を歩んできたが、決して良いことばかりではなかった。度重なる怪我や故障などのスランプ、それによるメンタルの低下など心が折れそうな局面を、ウエアを売る営業という立場に変わった今、ドラマティックなストーリーに変換して伝えることでビギナーの方に自転車への興味を深めてほしいという。もっとたくさんの人に自転車にまたがってほしい。風を切って自分でペダルを漕ぎ、遠く離れた目的地に向かって自分の足でたどり着くその達成感と楽しさは、便利な物を便利に使うことだけでは得られない満足感があるからだ。

巽さんは、ロングディスタンス世界選手権を目指すプロジェクト選手に選ばれたことによって、自身の練習内容やレース結果を発信する立場に。それにより、周りからの見る目が変化し、注目されるようになったという。トライアスロンが人生を豊かにしてくれているということを伝え、より多くの人とのコミュニケーションを通じて、製品に反映していきたいと語ってくれた。

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