PI 大学でトライアスロンを4年間やって、卒業後は東京都の教職員として、特別支援学校の体育を担当していたのですね。
大西 はい、教員の仕事をしながら、プライベートでトライアスロン、トレイルランニング、ランニングをやっていました。非常勤講師時代も入れたら、トータル7年間ですね。その後、フリーのインストラクターとして活動した後、株式会社BEACH TOWNでの仕事を始めました。現在は取締役としてフルタイムで働きながら、クラブのプロデュースやマネジメント以外にも、トライアスロンのプロジェクトやブランドアンバサダーの活動もやっています。もちろんライフワークとしてランニング、トライアスロン、たまにサーフィンもやっています。
PI 先ほど少し触れたのですが、THE BAYS(ザ・ベイス)のACTIVE STYLE CLUBのテーマ、どんな想いでここを手掛けたのでしょうか。
大西 「スポーツと街をつなげること」、「横浜のスポーツの拠点となること」というのが大きなテーマです。カフェもありますし、休憩ポイントとしてランナーやサイクリスト、いろいろな人のハブになって欲しいと思ってます。
また、会員制のフィットネスクラブという枠から飛び出して、もっと気軽に土・日曜日の朝に公園に行って体を動かすような感覚で、ここを拠点に友達と集まってランニングをしたり、ヨガをしに来たり、スポーツだけではなくカフェでもいい。待ち合わせ場所に使ってもらっても良いです。
自分の体や心で感じる体験を求めている人が多くなっている
PI 少し話がそれてしまいますが、大西さんは、例えば大学生のときからスポーツに関連することに関わっているので、もう15年以上前になりますね。何となく私も感じるのですが、スポーツをする今の女性、男性にとってはスタンダードになりつつある、「居心地がいい空間に”スポーツ”がある」という感覚は、例えば15年前にはあったのでしょうか。
大西 あまりなかったと思います。
PI 少し紋切りな捉え方ですが、例えば、15年前の人の楽しみや満足、衣食住と言えば、デパートなどおしゃれな所に行って、ブランド物を買うといったことがすぐに思い浮かびます。今は意外とそういうマス的な価値観には興味がなくて、スポーツなどを含めた実体験、何かへの挑戦に時間を使う。
例を挙げると、ヨガ、トレイルラン、ゴルフ、トライアスロンなどを楽しむ。さらに1つのスポーツだけでなく、複数のスポーツを気分によって変える、そういう人達がどんどん増えていますよね。15年前と比べると、やはりその辺は変化していますか。
大西 変わっています。世の中のニーズも物から事というか、自分の体や心で感じる体験を求めている人が多くなっていると思っていて、そこは理由や何かの流れがあると思っています。
PI 大西さんが感じるそこの変化というか、その流れの変化は何でしょうか?
大西 僕のプロフィールにて書いていることですが、昨今のスマホ、VR、デジタルでどんどん世の中が便利になったり、人工物やデジタルに囲まれた中での生活が増えれば増えるほど、それが発展すればするほど、その逆にある、山を歩くとか、海に入るとか、自分の足で歩くとか、走るとか、そういう体験を伴うアナログ感を求めるのではないかと思います。
反動というか、真逆のものを欲する人が増えるのではないかと思っていますし、逆にそういうものを用意してあげないと心身のバランスがおかしくなってしまいます。
何かしらのスポーツをもっと多くの人の日常に自然な形で取り入れてほしい
世の中がそういうものを求めているというのは、感覚的に感じています。少し前だと、山があったり、今だと、アウトドアです。今でも、フェスがすごく人気ですね。外で音楽をやる野外フェスです。やはり、日頃デジタルや人工物に囲まれた中で日々忙しくしている人が多いスピード社会だからこそ、逆にある山や海、自然、自分で体を動かすとか汗をかくという人間本来の営みみたいなことに帰ってくるし、そっちをやっていないと本当にいろいろなバランスを崩しておかしくなってしまうのだろうということは、常に思っています。
PI スポーツをやってない人にも、「そう思いませんか」と呼びかけたら、私も自然のなかで体を動かそうとか、何かやろうかなと思いますよね?
大西 僕はそこを伝えたくて、そこが世の中には必要なのではないかと思って今の仕事をやっています。前職の教員は生徒、保護者、同僚との関わりや、時代の変化などもあり、一般的にストレスの多い職場と言われていましたし、実際に心と体のバランスを崩されている方も目にしました。でも僕はそんな職場ででも毎日ストレスなく元気に働いていました。
そんな日々の原動力になっていたのがランニングやトライアスロンでした。出勤前の静かな朝に近所の公園をジョギングしたり、週末は気持ちのいいトレイルを走ったり。
また、家庭でも職場でもない、職業や役職も関係なく同じスポーツが好きで集まった仲間と一緒に体を動かしてリフレッシュしたり情報交換したり。
そういう体験がうまくココロとカラダのバランスを取ってくれてたいたので、仕事にも常に良いコンディションで取り組めていたのだと思います。
今はその教員時代の経験から”一人でも多くの日常にスポーツを取り入れてほしい”それもできればアウトドア(自然を感じる環境で)で…という想いで仕事をしています。
アスリートを目指すということではなく、生活をうまく過ごすためのスポーツを日常に取り入れてもらうということが自分のミッションです。
PI 僕もかなり近いことを思っています。今、このぐらいやるようになって、体調も全般的によくなっているし、食事も前よりは気を遣うようになったし、今日も食べ過ぎないほうがいいと思って、体重計を見るわけです。
大西 だから、何か始めることで、どんどんプラスに連鎖していくんですよね。家でもない、職場でもない、また別の仲間もできます。いろいろな意味でライフスタイルが豊かになっていく。人の日常にスポーツを取り入れてもらうことが自分のミッションです。
どうやったらその人の日常にスポーツが入っていくかというのは常に考えています。それは、能力のあるインストラクターだったり、通いたくなるような空間だったり、「ここだったらスポーツやってもいいかな」と思える綺麗なラウンジやカフェもあって、という風に、切り口はいろいろあると思います。「お気に入りのウェアで自転車乗ってみたいな」という風にウエアもその1つです。
THE BAYS(ザ・ベイス)もそうですし、BLUE多摩川もそうですが、われわれがプロデュースする所は常に過ごしたくなるような空間になるようこだわっています。レッスン前後の時間にちょっと自分で本を読んだり、パソコンを持って行って仕事したくなるような所を作っていきたいです。