村山 彩
食欲コンサルタント、日本初のアスリートフードマイスター、野菜ソムリエ、トライアスリート。
著書に「あなたは半年前に食べたものでできている」(9万部を突破。韓国・中国・台湾にて翻訳されている。)「あなたは半年前に食べたものでできている 実践編」「やせる冷蔵庫」(サンマーク出版)。5/15に新刊「しあわせ豆皿レシピ」(大和出版)を発売。
2012 館山トライアスロン総合優勝
2012 IRONMAN 70.3 WORLD CHAMPIONSHIP出場
2014 IRONMAN70.3台湾 エイジ優勝
屈託のない可愛らしい笑顔で多くの人の心を掴む村山彩さん。日本初のアスリードフードマイスターであり、食欲コンサルタントとしての指導、300例の冷蔵庫を分析した理論に基づいた冷蔵庫指導のほか、テレビ、ラジオ、雑誌などのメディア出演や企画監修、講演会、アスリートへの食事指導と運動指導など、幅広い活動を行っている食のスペシャリストだ。
「とにかく食事のバランスを取ることがアスリートも一般の方もお子様にも、最も重要なこと。でも、それをやることが難しいからこそ、どうすれば実践できるかを考えた時に、食材を貯蔵する冷蔵庫の中身を整えることや食べるお皿に注目しました」
食卓に並ぶ食事の入り口である冷蔵庫やお皿をコントロールすることが誰でもバランスの良い食事を実践できる方法だと考え、誕生した著書が”やせる冷蔵庫”そして新著の”しあわせ豆皿レシピ”である。ノウハウが仕組み化されたこの著書は一読いただきたい二冊。栄養学を語ることだけではなく、いかに仕組みとアイディアを実践に結びつけるかということに対して、日々脳をフル回転させ、魂を燃やしている村山さんに食の重要性について聞いてみた。
スポーツにおける食の重要性とは?
運動の目的は様々で、消費カロリーを増やすために強迫観念から運動をするのではなく、心地よく身体を動かしながら身体が欲するものを丁寧に選んで摂取することが一番だと語る村山さん。好きなウエアを着て楽しく運動をするためには、まず身体を動かすエンジンであるエネルギー源をしっかり摂取すること。それがあってこそのトレーニングであり、運動なのである。なぜならば、人間の身体は食べるもの以外からはつくられない。骨も血液も筋肉も全て食事から形成される。
さらに食べたものでエネルギーを得て動くため、一般の方より運動量が多いアスリートは食もトレーニングやトレーニング後のケアと捉え、よりこだわり連動して考えるべきだという。そうすることで初めてパフォーマンスアップの土台が底上げされるのだ。
本物の一流選手たちは競技結果の良し悪しに伴い、練習内容のみならず食事の振り返りも必ず行っているという。何をどんな調理法でどれくらいの量を摂取したか、自分にあった食事方法とは何なのか。それを追求することで選手生命も延びている。
それはアスリートに限らず、長くスポーツを楽しみたいと思うスポーツ愛好家の皆さんにも該当するのではないだろうか。”食を味方にすること”がどれほどスポーツにおいて、さらに健やかな人生において多大な影響をもたらすのか。食べたものが自分の身体に反映されるのには時間がかかるため、振り返りづらい要素であることは確か。しかし、着実に身体に影響を及ぼすもの。村山さんはまず”食の可能性”について気付きを得て、考えてみてほしいという。
食生活が乱れる原因とその対策とは?
健康的な食生活を定着させたい。大半の方が一度は願うことではあるものの、長続きしない原因とは一体何なのか。流行りのダイエット方法などに着眼し、短期的に実践し一時的なダイエットに成功したとしても、すぐにリバウンドしてしまったという経験をお持ちの方も少なくないのでは。村山さんが提唱する方法は”ハードルを上げないこと”だ。
「理想的な食生活を毎日実践することは、決して容易ではありません。うまくいかない日があったとしてもそこで終わせるのではなく、気持ちを切り替えて次の日にペースを取り戻すことが大切ですね。その場合のリカバリー方法を予め持っておくのもいいと思います。3歩進んで2歩下がるというペースで全然いいんです。地道な1日を積み上げていくことだけにフォーカスして、長期スパンで取り組む姿勢を継続できることが大切だと考えています」
3日坊主で終わってしまったとしてもそれを受け入れて、また再スタートを切る。すぐに理想に到達する魔法のような方法も近道も無いのである。地味な積み重ねが食に対する意識変革の底上げに繋がるため、諦めずに何度もトライ&エラーを繰り返す寛大さを持って取り組めばいつしか自分なりの心地よい食のスタイルが確立されるのではないだろうか。
理想的な食生活がもたらす心への影響
前述したとおり、理想的な食事を定着させ健康的な身体を手に入れるための魔法は無い。一汁三菜(一汁ミニ五菜:豆皿しあわせレシピにて提唱)のバランスの良い食事を適量摂取するという意識を持ち続け、実践し続けることで身体が変わり、最終的には自信がつくという村山さん。
次々と新しいダイエット方法が情報として入ってくる世の中ではあるが、それに振り回されて疲れてしまうよりは、自分の信じているまっとうな方法で日々身体と向き合うことで人間として強固な軸が形成され、心がシンプルになって変なストレスがなくなっていくという。
食は身体をつくると同時に、健やかな心を保つのにも重要なのだ。例えばカルシウムは骨を作る栄養素だと言われているが、実は神経伝達にも影響を及ぼす。今日寝不足なのは夕飯に食べた揚げ物が胃腸に負担をかけて睡眠の妨げになっていたからかもしれない。食べ物が感情をも作っていると考えると、今口にするものがもたらす未来への自分への影響は計り知れな。それを日々意識することで、もっと自分を大切にし、丁寧に生きていけると語ってくれた。
バイクライド中にオススメの補給方法
出産前は、トライアスリートとしてロングディスタンスのレースを主戦場に活躍していた村山さん。ロングライドやローラー台トレーニング、スピード練習などバイクに乗る時間が長かった。食を大切に考えている彼女は、練習中にどんなものを食べていたのだろうか。
「置かれた状況の中で一番良い方法を探っていました。手作りのものを持参することがベストですが、夏場だと腐ってしまうことを懸念するのでコンビニに立ち寄ることももちろんあります。エネルギー補給にはおにぎりや団子、素甘などの和菓子を、たんぱく質補給には卵や枝豆などをチョイスしていましたね」
「ただ、血糖値を一気に上げてしまうとその反動で血糖値が急激に下がり、手の痺れや頭がぼーっとしてしまう状態に陥ってしまうため、血糖値が上がりやすいチョコレートを食べたい時は豆乳と一緒に摂取するなどして、GI値をコントロールすると良いと思います。電解質などはスポーツドリンクで摂取できるので、エネルギー源を固形物から摂るときはそこを注意してみてください」
地方での練習やレースなどいつもと違う環境に身を置いたとしても、最小限の知識があれば対応できる。トップ選手や競技者だけではなく、スポーツを日常的に楽しむ愛好家の皆さんも、食事に対する意識を高めて実践していただくことがより充実したスポーツライフを送ることに繋がります。明日からの食生活を少しだけ変えてみてはいかがでしょうか。
また村山さんの新刊「おいしくてカンタン! バランスよく食べられる! 豆皿しあわせレシピ」が発売されました。是非こちらもご覧ください。
Interviewed by Marina Kitagawa and Photo by Pearl Izumi
楽しく無理なく続けられる健康なからだづくりコミュニティ「AyaLab(アヤラボ)」を開講